春雪に包まれた山門水源の森トレッキング
琵琶湖の北、滋賀県長浜市に広がる山門水源の森。 東ヶ谷山を目指して、山岳会の仲間とともに早春の湿原を歩いた。 当初の予定日は雨で中止。 しかし、急遽集まった有志3名で再挑戦することに。 ところが前日、寒波が襲来し、一面の雪景色が広がることとなった。 春の訪れを感じながら歩くつもりが、一転して冬山の様相となる予想外の展開だった。
朝9時、駐車場を出発。 沢沿いのルートに足を踏み入れると、雪解け水のせせらぎが響き渡る。 ひんやりとした空気が心地よく、耳を澄ますと春の気配も感じられた。 歩き始めてすぐ、目当てのキタヤマオウレンを発見。 白く可憐な花が雪の上に咲き、水滴が朝の光を受けてきらめいていた。
沢筋を抜けると、凍りついた湿原が広がる。 まるで別世界のような幻想的な風景。 その中をゆっくりと歩き、東ヶ谷山への登山道へと進む。 標高を上げるごとに積雪量が増していき、最初のピーク「守護岩」までは比較的歩きやすかったが、そこから東ヶ谷山までは深い雪に覆われていた。
先行パーティーの後ろを、アイゼンを装着せずにキックステップで進む。 次第に傾斜が増し、途中で先頭を交代する。 今度は自ら新雪をラッセルしながら急登を登ることに。 吹き溜まりでは膝上まで沈み、足を取られながらも一歩ずつ高度を上げていく。 樹林の間からは青空がのぞき、陽を浴びた雪が枝から舞い落ちてくるたび、背中や首筋に冷たい感触が走る。
そして11時55分、標高657.5mの東ヶ谷山山頂に到達。 眼下には余呉湖が広がり、遠くには横山岳や伊吹山の姿が望めた。
山頂で昼食。 雪山を歩いた後の温かい食事が身に染みる。 隣でランチを楽しむパーティー、にぎやかな雰囲気に包まれた。
下山は、ワカンを装着し、先行して急斜面を降りる。 深い雪と浅い雪が交互に現れ、大きな木の下では雪が少なく、根に足をとられる。 つまずきながら慎重に足を運ぶ。
急登を降りたあたりで軽アイゼンに履き替え、湿原まで降りてくると、再び穏やかな春の空気に包まれる。 3月のお彼岸にこれほどの雪山を歩けるとは思わなかったが、思いがけない春雪の山行は、春と冬の境界を感じる山歩きとなった。
花、水、新雪、ラッセル、盛りだくさんのメニューをこなし、充実した山行になった。(3月20日)